双葉町小学生励ます演奏会 レポート

5月6日、埼玉県加須市騎西小学校で、弦楽四重奏による慰問コンサートを行いました。今回の震災と原発事故で、福島第一原発の5・6号機の立地する双葉町(総人口約6800人)から、約1200人の皆さんが一次避難として埼玉県の「さいたまスーパーアリーナ」へ、4月に二次避難として同県加須市の廃校予定だった旧騎西高校に、町役場の機能とともに避難されています。これに伴い、旧騎西高校に近接する騎西小学校には、双葉町立の南小学校と北小学校に通っていた児童のうち99人が編入しました。

日本フィルは埼玉県との関係深く、さいたま市内の大宮ソニックシティホールで年6回「さいたま定期演奏会」を行っています。この演奏会を日本フィルと共同にて主催している「財団法人埼玉県産業文化センター」は、毎年さいたま市主催で市内の小中学校10校を対象に日本フィルの室内楽(プライマリーコンサート)を実施しています。

さいたま市の小中学校で好評なプライマリーコンサートを、双葉町からの子どもたち含め、騎西小学校の全児童に聴かせたい」と、(財) 埼玉県産業文化センターの担当の方が、加須市教育委員会を通じ学校と連絡を取っていただき、今回の訪問が実現しました。

体育館では1年生から6年生まで455人の児童が集合し、みんなソワソワしながら日本フィルのメンバーを待ちます。出演はヴァイオリン山田千秋・豊田早織、ヴィオラ高橋智史、チェロ山田智樹の4人。「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」の第一楽章の演奏が始まると「あっ!知ってる!」「聴いたことある!」のヒソヒソ声が、あちこちから上がります。

今回の進行役は福島県三春町出身、チェロの山田が務め、メンバー紹介で「僕も双葉町から少し離れた福島県三春町の出身です」と優しく話しかけると、「福島県だから双葉のおともだちと同じだね」と、低学年のブロックから、かわいい声が聞こえて、メンバーも思わず微笑みます。しっとりとした「五木の子守歌」など日本民謡のやさしい響きが胸に染みた後、「となりのトトロ」の《さんぽ》や「アンパンマン」のテーマといったアニメソングに、特に低学年の子どもたちは大喜び。みんなの元気な歌声で体育館がいっぱいになりました。

サウンド・オブ・ミュージック」のメドレーでは、特に《ドレミの歌》が大好評で、これまた大合唱。最後に全員が立って騎西小学校の校歌を、弦楽四重奏の伴奏で大きな声で歌いました。児童代表のお礼の挨拶と花束のプレゼントがあり、日本フィルもアンコールで「上を向いて歩こう」を演奏すると、児童の後ろにいらっしゃった保護者の方も、小さくうなずきながら演奏に耳を傾けておられました。

今回、加須市に臨時採用され、騎西小学校で指導補助員をされている双葉町出身の方は、
「とても透明感のある音色で感動しました。子どもたちの笑顔と大きな歌声に私も元気をもらいました」と、晴れ晴れとした表情で話されていました。
校長先生はじめとする騎西小の先生方、地元の保護者や児童のみなさんが、双葉町の子どもたちを温かく迎えている学校の雰囲気が、私たち日本フィルのメンバーにも、とてもよく伝わってきました。
「子どもたちの笑顔が、周りの大人も元気にする」改めて、音楽の持つ力を実感できたミニ・コンサートでした。
私たちは今後も様々な編成で訪問を続けたいと思っています。5月12日には、騎西中学校を訪問します。