「被災地に音楽を」騎西中の生徒を励ます演奏会

5月6日の騎西小学校での弦楽四重奏に引き続き、5月12日埼玉県加須市騎西中学校で、金管五重奏による慰問コンサートを行いました。福島第一原発の5・6号機の立地する双葉町から、約1200人の皆さんが加須市の廃校予定だった旧騎西高校に避難されています。これにより旧騎西高校に近接する騎西中学校には、双葉町から63人の生徒が編入しました。

637人の生徒さんでいっぱいになった体育館に、キラキラ光る楽器を携えたメンバー5人がさっそうと入場します。出演はトランペット星野究・只野佑季(賛助)、ホルン原川翔太郎(賛助)、トロンボーン藤原功次郎、チューバ柳生和大。「吟遊詩人のソナタ(作者不詳)」で開幕し、進行役の星野が、双葉町より編入した生徒さんに向けて「日々、大変な中だとは思いますが、今日は生の音楽をリラックスして聴いてください」と、優しく語りかけました。

続いて各楽器の紹介を交えての演奏で、アンダーソンの「トランペット吹きの子守唄」、ホルンはピアソラリベルタンゴ」、ジャズのナンバーで「ラッサス・トロンボーン」、そしてチューバも同じくジャズナンバーから「ふらふらするのはもう止めた」の以上4曲。ジャンルを超えた豊かな表現力を持つ各管楽器の音色が充分に体感できる演奏でした。

続いて「サウンド・オブ・ミュージック」のメドレーから《テーマ》《エーデルワイス》《ドレミの歌》、そして《君をのせて》を含めたアニメ「天空の城ラピュタ」メドレーが、途中から進行役を交代したトロンボーン藤原の若々しく、自身の体験を交えた曲目紹介とともに演奏されました。時折のユーモアで生徒さんから思わず笑いがこぼれる中、
「僕も小学校4年生の時に阪神大震災に遭って、1ヶ月ほど避難所で生活しました。」
というトークもとても自然に、生徒さんと保護者の方の心に届きました。

楽しい時間はあっという間で「ディズニーソング・メドレー」でフィナーレ。生徒代表のお礼の挨拶と花束をいただき、「アンコールは、AKB48の《会いたかった》です!」藤原の声に、女生徒さんから「ワァーッ!」「キャーッ!」と、とっても素直な歓声が上がりました。いっきに体育館がヒートアップし、名残りを惜しむように終演となりました。

藤原は曲目紹介とともに「小さい頃、阪神大震災まではピアノと作曲を習っていましたが、避難所で何度かブラスバンドの慰問演奏を聴いて、その音色が好きになって中学からトロンボーンを始めました」と、楽器との出会いを、想いを込めて語りました。

騎西中学校にも約50人の吹奏楽部があり、福島県双葉町の生徒も入部されているとの事。
「この震災を乗越え、ここから将来、プロの音楽家が育ってくれたら・・・。」と思わずにはいられませんでした。私たちは今後も、吹奏楽部へのクリニックも含め、訪問を続けたいと思っています。