冨田勲×藤岡幸夫  4.18名曲コンサートを語る その1

サントリーホール
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第338回名曲コンサートに登場
「世界のトミタ」と指揮者藤岡幸夫さんの
対談を、全3回に分けてアップします。

その1
「オケに対する思いを全部出し切ったような気がしてね。」(冨田)

ジャングル大帝について〜

冨田:はじめて手塚プロに行ったらね、あそこは面白いところで、手塚さんの時間割があるんですよ。面会人が多いからだね。で、ぼくは(面会が)10分。他の人は5分の人もいたな。(笑)

とにかくめちゃめちゃに忙しい人。

でも「ジャングル大帝」の手塚さんの意気込みはすごかったな。
いきなりチャイコフスキーの5番のシンフォニーをピアノで弾き出してね、「こういう壮大なイメージで」ってね。
興奮するとミスタッチも多かったけど、気迫があったなー。あれ録音しとけばよかったなー。誰も聞いてないらしいのね。

藤岡:(メロディーを口ずさむ)〜ですね。

冨田:そうそう。その出だしのメロディーを逆にすると「あーあーー」っと「ジャングルの朝」(笑)(注:もっとも有名なメインテーマ)

冨田:それにしてもね、ハンターの巧妙な罠でね、妻のエライザを捕まえて、しかもエライザはお腹にレオを宿しているわけでしょう。パンジャとしてはどうするべきか。銃で狙われていてもなにがなんでも突っ込んでいくしかない。ぼくは戦中育ちなので感じるところがあるねぇ。

藤岡:船の中でレオが生まれますよね。ストーリー性が素晴らしいし、またその音楽がねずみの声とか、チェレスタも使う。シンプルだけど美しい。マウスピースだけ使ったりするでしょう。新しいですね。

冨田:楽器はこんなこともできるというのを子供たちに聴かせたかったのよ。

藤岡:美しくてやさしい。やっていて音楽が楽しいんですよ。気持ちいい。

冨田:手塚作品には(主人公が)強いだけではなく弱いところもある。レオだけが小さいので檻や小窓から抜け出ることができて海に飛び込んで心細くなっていると、泳ぎを教えようと集まってくる魚たちがいるんだね。あれなんか山田洋次映画の寅さんの善意の人たちに通じますよね。

藤岡:トロンボーンが出てきて、楽しい愉快な魚たちが出てくる。まさに人生そのものですね。
コンサートでやるというのがいいですよね。オケの楽しさに関心を持ってほしいですね。「星になったママ」がいいですね。「ママは星になったのよ。レオのことを見てるからね。」あそこは指揮していても涙が出ますよ。
シンプルだけど美しい。
ワーグナーみたいなテーマも出てきて、かっこよくてね。

冨田:ぼくが35歳ぐらいのときかな。オケに対する思いを全部出し切ったような気がしてね。
そのあと行き詰った。何を書いてもつまらなくなったんです。

藤岡:それでシンセサイザーの方へ行ったんですね。(笑)

冨田:若い頃はよくあることで。

〜対談はつづく〜
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