4月東京定期 上岡敏之氏登場!

今月の定期には、現在ドイツのザールブリュッケンヴッパータールを拠点に活躍する上岡敏之氏をお招きしました。

私たちとしては、満を持してようやくご登場頂いた、という感があります。

これまでも都内のオーケストラに客演して圧倒的な名演を繰り広げてこられた上岡氏。今回は今やご自身のバックボーンともいえるドイツ音楽の直球ド真ん中に入り込んだ、極めつきのプログラムです。

「今回のプログラムが、これまで日本のオーケストラに客演した中で一番難しいかもしれない」

とおっしゃるだけあって、練習は緻密そのもの。

首席指揮者ラザレフの厳しい練習にようやく馴染んで来た日本フィルの団員も、いつものそれとも異なる、いわば未知の緊張感にかなり刺戟(?)を受けているようです。

今回のコンサートでの大きな特徴に「絶対的な沈黙」があります。マエストロ曰く「日本のオーケストラは、日本人ならではの繊細さを生かして欲しい」。そんな日本人的な美の感覚が明日からの定期では最大限に活かされるのではないでしょうか。

というのもワーグナー作品では、所々に総休止や無音に近い超弱音の部分が出て来ます。ただそれが単に音が小さい、という意味ではなく、上岡マエストロが「支配する」峻厳なサイレンスなのです。

それはまるで能の名曲「道成寺」の鐘入りの前に繰り広げられる乱拍子のような、この世のものとは思えない極度に張りつめた沈黙と最低限の音による時空間です。「トリスタンとイゾルデ」の前奏曲ではこんな臨界点ギリギリの音世界から、圧倒的な官能の世界へとなだれ込みます。

そして・・・・・これ以上書くのは野暮ですね。是非とも会場で世界に誇る日本人指揮者上岡敏之の指揮芸術をご堪能ください。

あと、くれぐれもケータイ電話のスイッチにはお気付けを。