レポート第2号その1

<かやぶき屋根と囲炉裏のある食堂にて>
 2011年6月5日から6日にかけて、福島第二原発のある富岡町と、近接の葛尾村の方々が避難している、三春町を訪問しました。
初日(5日)は、三春ダムに程近い総合観光施設「三春の里 田園生活館」の中で、大きなかやぶき屋根と土間の囲炉裏が心和ませる会場での演奏です。ここの施設には富岡町から118人の方々が避難しており、日本フィルを個人で支援していただいている方から紹介された「NPOあぶくまNSネット」の仲立ちで実現しました。

 メンバーはヴァイオリン山田千秋・辻野順子、ヴィオラ高橋智史、チェロ山田智樹。避難されている方をサポートする地元スタッフを含め、30人程の方にお集まりいただき、「会津磐梯山」を含む日本民謡サウンド・オブ・ミュージック、「見上げてごらん夜の星を」など、子ども向けには「アンパンマン」のテーマが特に好評でした。高校時代までをこの三春町で過ごしたチェロの山田は、特別な感慨を胸に秘めての演奏で、「楽器を演奏することは世の中のため、人のためになれる、ということを震災後は実感しています」と話していました。



<三春町営体育館の玄関ロビーにて> 

 翌日(6日)は、富岡町の方々が避難生活している三春町営体育館を訪れました。演奏は体育館の玄関ロビーで、朝10時ということもあり当初はまばらでしたが、「五木の子守歌」など弦楽器のやさしい音色に誘われるようにお集まりいただき、最終的には20人程に聴いていただきました。ここでは「ふるさと」の演奏に感極まり涙する方々もおられ、チェロの山田が地元出身と聞き親近感を持たれ地元の話題で話しかけていただき、演奏のお礼にお茶でのおもてなしを受けて、こちらの方こそ恐縮してしまいました。

<町立三春小学校体育館にて>

 6日の午後は、富岡町葛尾村の子どもたちが編入している、町立三春小学校体育館での演奏です。全校児童約400人のこの小学校には富岡第一小学校から8人、富岡第2小学校から6人、葛尾村の小学校から1人の児童が編入しており、三春小含め計4校の校歌をそれぞれ演奏しました。特に三春小には弦楽合奏と合唱のクラブがあり、ヴァイオリンなどの弦楽器を持った小さな音楽家たちと合唱団が、日本フィルメンバーを囲み、元気いっぱいに演奏し歌ってくれました。
 
 「ビリーブ」や「さんぽ」も大合唱で大盛上がり、「アンコールッ!」の大コールで、1曲では足らず急遽「見上げてごらん夜の星を」を演奏すると、今度は同席していた保護者の方々が大声で参加してくださいました。「避難してきて、久しぶりに校歌を歌った。友達を思いだし、懐かしくもあり、寂しい気持ちもした。」編入した児童が感想を述べてくれました。チェロ山田も、「子どもや地域の皆さんの目を見て演奏し、楽しんで頂いているのが伝わってきた。ふるさと三春にて、少しでも元気をお届けできればという気持ちで演奏した。」と語りました。

 余儀なくされた転校と避難生活という劇的な環境の変化は、子どもたちの小さな心にも大きな負担となっています。私たちは、子どもたちが明日への希望を持ち続けられるよう、今後も学校への訪問を継続したいと考えています。

(営業事業部 磯部)