6月25〜26日 福島県二本松市 安達郡大玉村へ(楽員レポート)


6月25〜26日、福島県二本松市安達郡大玉村にて日本フィルの木管メンバーが初めて訪問コンサートを行いました。メンバーは坪池泉美(オーボエ)・芳賀史徳(クラリネット)・田吉佑久子(ファゴット)の3名、いずれも2009年〜2010年に日本フィル入団のフレッシュなトリオです。今回の訪問に自ら進んでボランティア演奏に名乗り出た3人が、音楽家として、また一人の人間として、感じたままをレポートにし連名で寄せてくれました。

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私たちは6月25日、26日と福島県二本松市安達郡大玉村を訪問しました。
1回目の演奏はJICA(独立行政法人国際協力機構)二本松訓練所で行いました。この施設は、浪江町富岡町等から避難された方およそ140名が滞在しているところです。被災された方々の前で演奏するのは初めてのこと、実際、最初はどんな気持ちで吹いたらよいのか分からず、本当に来てよかったのだろうか?という不安もありましたが、時間がたつにつれ、皆様、一緒に歌ってくださったり、終演後は声をかけてくださる方もいて、来てよかったと思うことができました。
その後、JICAを足早に去り、次は、こちらも避難所となっているあだたら体育館へ向かいました。浪江町から避難された方が当初は200名以上、3か月を経た現在も20数名の方が滞在されています。テレビで目にしていたような、何もない体育館に畳を持ち込み、段 ボールで仕切りを作っただけの空間に皆様住んでいらっしゃいました。
体育館に一歩足を踏み入れると、何とも言いがたい気持ちになりました。同じ日本という国に住んでいながら、こんなにも辛い状況に置かれて生活しなければいけなくなってしまった方々に、こちらからかける言葉が見つかりませんでした。
しかし、体育館で被災者のお世話をしている浪江町役場の古川さんが、私達をやさしく迎えて下さり、2回目の演奏をしました。近隣の旅館などに二次避難されている方々も雨の中来てくださり、楽しそうに聞いていただけ、私達は本当にうれしかったです。演奏後、少しだけお話しをさせて頂く時間があったのですが、「ふるさと」を歌いながら浪江を思い出されてしまったようで「ふるさとに帰りたいのに、帰る家ももうない」と涙を流していらっしゃる方もいました。本当に何もかも失ってしまった方達に、私達は何ができるんだろう?と思わされましたが、皆さんが終演後にいやされ、感動したと言ってくださることに私達も微力ながらすこしだけ皆さんに元気を与えることができたのかなと思いました。


翌日は、大玉村にあるあだたらフォレストパーク内にて演奏させていただきました。この施設にも、富岡町他からおよそ80名の方々が避難されています。周りを山々に囲まれ、まさに森の中にいるような雰囲気の中での演奏でした。みなさん、一緒に声を出して歌って下さいました。

3回の演奏を通じて感じたのは、皆様あまり表には出さないけれど、心に深い傷を負ってしまったことです。最初は無表情に近かったのですが、曲が進むにつれ、皆様口ずさんでくださったり、声を出して下さったり、最後に声をかけて下さったりしました。
実際に被災地へ行くことができ、目や体で現実を知ることができました。テレビの中でおきている事ではないのです。これからも、少しでもお役に立てるのであれば私達は、一音楽家として被災地を訪れたいと思いました。