一緒に、オケを聴こう。第2弾12月東京定期 マーラーの巻 その3

その3。で、マーラーの1番の話をしましょう。

全部で正確に言うと11曲あるシンフォニーの中で一番まともな尺というか、1時間弱で終わってしまう。楽章の数もスタンダードな4。

●■▲ふーん。

この間のブルックナーのときもそうなんですけど、この曲にも譜面の問題というのがあります。第1稿、第2稿・・・というやつですね。で、残念ながらこのマーラーの場合も第3稿まであるんですね。
第1稿が書かれたのは、初演されたのが1889年。

▲89年・・・(めもっている)

完成されたのは1888年。じゃこの年はどんな年かというと、ブラームスのシンフォニー4番(歌う)が初演されたのが3年前。で、ついこの間やったブルックナーの8番は、この時点ではまだ初演されてない。
思いっきり19世紀の空気にはまってる世代で、まだロマン派の残照が十分残ってる。
で、まず第1稿が書かれます。
第1稿は、交響詩ってタイトルで書かれています。このときは全5楽章形式。
それで第2稿が1893年。このときもまだ5楽章形式のまま。この時点で《巨人》てタイトルができました。まだ「交響詩」のタイトル。この時《巨人》(=Titan)という副題が付けられたわけ。ジャン=パウルっていうひとの書いた小説にちなんでいるんだけど、あんまりそれは気にしなくていい。それを標題として、描いているわけではないから。イメージとして、例えば4楽章の冒頭なんか聴くといかにも「巨人!」って感じがするんだけど・・・

大音響

いかにも巨人が動いているような雰囲気がするんだけど、決してそれを描いている訳では決してない。

ゴジラっぽいよね。

ゴジラっぽい。

○(←一緒に聴く会途中参加)福島さんのシンバルが鳴りますな。日本一だもんな。

うん。
その後、第3稿がつくられます。なんでこういうことになっちゃうかっていうと、マーラー自身は生前、作曲家というよりは指揮者で名が売れていたわけです。なので、いろんなところで自分の曲を演奏する機会が与えられたんだけども、その都度書き換えちゃうの。だから第2稿の中でも実は2種類あったりするんですよ。ハンブルクで初演した版とそうじゃない版ってのがあったり・・・。

(どうしてもこの第2稿のややこしい話をしたくなっちゃうらしいがぐっとこらえて)

その次、1896年にようやくこの第3稿が初演されます。ここでは4楽章になってます。ではなぜ5楽章から4楽章になってしまったのか。というと、・・・ちょっと待って下さい(と、出て行ってしまう)

■(私たち、さっさととり残されて、仕方なく)・・・タイタニックのタイタン?

▲え・・・そうなんですか?

(そうなんです)

(ダダダダっと足音、戻る)本来この5楽章形式の第2楽章であった「花の章」ってのがあるんですね。で、音源をもってきたつもりが忘れてしまった。
5分ぐらいで終わっちゃうものすごい美しい曲なんだけど、これを第3稿の時にはカットしてしまいました。ものすごい美しい曲・・・(と、ホワイトボードにカッカッカッカッと書く)

(マスミツさん、花の章聴けなかったけど今度聴かせて下さいね。
次回はいよいよ東京定期を聴きながら、語りはなお熱く・・・続く)