公演担当者と一緒に、オーケストラを聴こう 第3弾 ライヒの巻 その1
2011年あけて最初の東京定期は、
なんだか不穏なプログラムです。
今回の企画担当者との「一緒に聴こう」第3弾は年末に行われたのですが
●ライヒ、いつ聴きます?
年内にやりますか。でも、思う存分音を鳴らせる時間がいい。
●じゃ、サービスセンターの電話業務が終わった後ですかね・・・
・・・ということで、
終業後に「今日はライヒの日でーす、ライヒの日〜」
と怪しげなおふれが事務所にわたり、
公演担当者による
・・・さあいろいろガンガン鳴らすわよお聴きなさいよ・・・
という声が聴こえたか聴こえないか
とにかく会議室のドアは閉められたのでありました。
スタート!
その1 今回の定期演奏会の一つのテーマは「アメリカ音楽」です。
●それはシズオ・Z・クワハラ氏の希望?
まず僕たちのプランとして、アメリカに焦点を当てたプログラムを作りたかった。何ができるかなと考えて、今回はあえてガーシュウィンとバーンスタインだけは絶対やるまいと思ったのです(笑)。
指揮をクワハラさんにお願いすることが決まって、彼ならばチャレンジングなプログラムにも対応して頂ける確信があったので、今回のようなラインナップになったわけ。他にはジョン・ケージやフィリップ・グラス等も候補に挙がっていました。
ただ一言で「アメリカ音楽」と言ってもいろんなルーツがあって、例えばジャズなんかもその一つ。現在のジャズに至るまでには色々な変遷があるわけだけれど、重要なルーツして「ラグタイム」と呼ばれる音楽を挙げることができます。
♪Scott Joplin:The Entertainer
これは1800年台後半にスコット・ジョプリンという人が書いた作品。これらの音は即興ではなくて、キチンと譜面に書いてある。ただサウンドはジャズっぽいでしょ?ちょうどクラシックとジャズの中間くらいのようなもの、かな。
●よく金管五重奏の皆さんがアンコールでその曲やる。
じゃあ純クラシックのほうはどうかというと、ヨーロッパのロマン派の流れを汲んだ保守的な人たちもいたんだけど、20世紀に入ると一気にアヴァン・ギャルドな作曲家が出てきた。
♪John Cage:Sonata and Interlude for prepared piano
これはジョン・ケージの《プリペアード・ピアノのためのソナタとインタリュード》という作品。「プリペアード・ピアノ」って分かる?ピアノ線に釘や消しゴムを挟み込んで、不思議な音色や倍音を導き出すものなの。
●ピアノそのものの音をカスタマイズしちゃうわけだね。
ケージの作品の第2曲なんかは明らかにこの音楽の影響なんです。
♪Gamelan music
●ガムラン?
そう。プリペアード・ピアノの音色やメロディがとても似ているでしょ?そしてガムランというのは追々触れる《ミニマル・ミュージック》にもとても大きな影響を与えています。
●ところでアメリカ音楽って、考えてみたらすごく最近なのね。
そう、良い意味で伝統がない。だから20世紀という情報が溢れだした時代には、それまでの因習にとらわれることのない、新しい音楽がケージ以外にも生まれやすかったわけですね。
例えばモード・フェルドマンという作曲家がいて、彼の曲は聴いてもらえばわかるけれども、モーツァルトやベートーヴェン的な意味での展開や変奏といった要素がない。
♪Morton Feldman:Coptic light
この作品、本当は25分ぐらいある曲。一聴すると変化の極めて少ない音楽がずっと流れてる。ま、これでもフェルドマンにしては短いのだけれど。例えば彼の弦楽四重奏曲第2番は演奏に6時間かかるからね(笑)
●切れ目なく、6時間?
フルオーケストラで、この状態。時間も核もリズムも曖昧。
●なんだか雅楽っぽいね。
こういう不思議な時間感覚というのも、ライヒにも影響を与えていったと思いますね。
次に聴いてもらうのは、ちょっとライヒよりも年上のテリー・ライリーという作曲家のin Cという曲。
♪Terry Riley:in C
●同じ音やリズムが延々と繰り返されている。デジタルなんだか、アナログなんだか。
次にライヒより年下のフィリップ・グラスという作曲家の作品を。ウィーン・フィルでヴァイオリン・コンチェルトが演奏されたりするくらい、今では大家のグラス。彼の《浜辺のアインシュタイン》というオペラがあるんだけれど、これが面白い。
♪Philip Glass:Einstein on the Beach
●すごいねえ……
シンセサイザーは入っているけれど、基本的にはコンピューターでなく、人力でやっていて、この状態がずっと続く。
・・・・その2に続く