公演担当者と一緒に、オーケストラを聴こう。第3弾 ライヒの巻 その2

その2 じゃあ、いよいよ我らがスティーブ・ライヒの曲を聴いていきましょう。


有名なのがこの《18人の音楽家のための音楽》。これもびっくりするんだけれども、全てアコースティックな楽器で演奏されていて、電子音やコンピュータ処理とかは一切施されていない(人の声はマイクで増幅されてるけど)。


Steve Reich:Music for 18 musiciansよりSection 1


●最近テレビでもやっていたやつ?


そう、去年東京オペラシティで演奏された時の模様がNHKで放送されたよね。
で、このパルス状態が1時間強、続く。


Steve Reich:Music for 18 musiciansよりSection 3-B


●ああ、きれいだねー(無機質かというとそうではなく)


本当にきれいでしょ。


●聴くがわの感情が引き出される感じがするのね、こういう風にやられると。


今度日本フィルで演奏する《ヴァリエーション》というのも比較的この曲の路線に近いものがあるかな。
もう片方で、彼の初期の作品なんだけれども、come outという曲がある。


Steve Reich:Come out


これはテープ音楽です。別に再生機が故障しているんではなくて、こういう曲なの。人の声をサンプリングして、その一部をコピーさせたりループさせたりしてる。解体→再構築というか。。。
結果として、今のDJの皆さんがやっている音楽とつながってくる訳ですよ。だからライヒの音楽は若い人にも人気がある。
あと、これが《ピアノ・フェイズ》という曲。


Steve Reich:Piano Phase


●徐々に二人の奏者が奏でる音がズレてゆくという点は、打楽器の福島さんがワークショップでやる《クラッピング・ミュージック》をよく聴いてるから、実感しやすいな。


とても簡略化して仕組みを説明しますね。これでライヒの作品ではないけれど・・・。


坂本龍一:1919


 ここでピアノと弦楽器のリズムにズレが生じてきているのはわかる?今ピアノがずっと

♪と、会議室のピアノで、弾く!

ヴァイオリンとチェロが8つの音符を弾いている間に、ピアノは音符を一つずつ減らしていって、また増やして行くわけです。


●8-7-6-5-4-5-6-7-8ね


こうやって意図的に生み出された「ズレ」によって、音のモワレ状態を導くのもミニマル・ミュージックの大きな特徴なんです。
 あと余談だけど、この《1919》という作品では、3つの楽器がそれぞれ音型を繰り返しているんだけれど、2つのリズムの同時に鳴っているのが分かるでしょう?ピアノが6拍子でヴァイオリンが4拍子なんですよ。6拍子が2回繰り返される間に、4拍子が3回。同時期に異なるリズム(ポリリズム)重なっている点は、今回の定期で併せて演奏するストラヴィンスキーの《春の祭典》にも関係してくる。その話はまた次回。
「ズレ」に着目した作品でもう一つ紹介。ハンガリー生まれで現代音楽の巨匠リゲティの作品で《ポエム・サンフォニック》というのがあるのでまず聴いてみましょ。


♪Ligeti György:Poème Symphonique for 100 metronomes


●何の音?


これは100台のメトロノームが一斉に鳴っている音(笑)。多様な周期的な時間軸が、「ズレ」によってより多彩な音世界を生み出す訳。ちゃんと楽譜も出版されていて、ヤマハでも売ってる。


●こういう曲によって、「聴く」ってなんだろうと、考えるようになるね。

そもそも、「聴く」とはなんぞや。と。
では元に戻って、他のライヒ作品を紹介しますね。《エレクトリック・カウンターポイント》という曲があるので、聴いてみて。これを弾いているのはパット・メセニーという世界的な有名なギタリスト。


Steve Reich:Electric Counterpoint


無印良品のお店に流れてそうでしょ(笑)。


●この感じだと、ポピュラー音楽とかバロックの繰り返される低音みたいであまり違和感ないね。ライヒがクラシック以外の層にもウケがよいのがわかる気がする


聴いていて気持ちがいいでしょ。他には合唱が入るのもある。(Ipodいじりながら)今回は文章にならないかもねえ。聴いてばっかりで(笑)。
《砂漠の音楽》というのがあるので聴いてみましょう。さっきの《18人の音楽家のための音楽》に似てるパルス系の音楽。


Steve Reich:The Desert Music


あと、サンプリングされた人の話す言葉にを楽器の音を重ねるというのもよくやる。


Steve Reich:Different Trains


今、「ニューヨーク、ニューヨーク」っていう人の声あったでしょ。この音程をチェロがそのまま弾いてる。要は、しゃべり言葉にも音程があると。


●これ、HP上で聴けないの?聴けたら一発で分かるのにねえ。


著作権の問題があるからね。《18人の音楽家のための音楽》の一部はライヒのオフィシャル・サイトで公開されているから、リンクしておきますね。


・・・その3へ続く。