公演担当者と一緒に、東京定期を聴こう 第6弾R.シュトラウス《町人貴族》の巻 その4

その4.最後に、リヒャルトの本性が出たかな、と。

次に聴くのは「クーラント」。古典組曲といって、バッハにもあるようにいろんな踊りの種類を集めた組曲の中にも「クーラント」があります。フランスが起源の舞曲です。

♪同「クーラント

ここにもソロ・ヴァイオリンが。

●町人貴族って、チラシを見ただけではあまりイメージが湧かないですね。

そう、残念ながら楽しさは分からないですね。
ではこんどはジュルダンの娘の彼氏クレオントが登場する音楽

♪同「クレオントの登場」

●(リュリ版初演時の模様を再現した衣装の写真を見て)こういうのがあるだけでも、ずいぶんイメージが湧くのに。「クレオントの登場」、とてもきれいな音楽ですね。いろんなタイプの踊りの曲、やはり古典組曲ということを意識していたんですかね。これ聴かされてリヒャルトだよ、と言われても分からない気がします。

まあそうでしょうね。

♪音楽は続きます・・・

途中から今みたいに、明るくなります。本当のバロックだったらこんな風に、トライアングル鳴ったりはしないでしょう。

今度は第2幕へ向けた間奏曲です。

♪同「間奏曲」

トララン♪って感じのトリルが、リヒャルトっぽいでしょう?どういう場面かというと、貴族になりたいと憧れているジュルダンに、つけこんで金を巻き上げようとしている伯爵ドラントと、その恋人とは知らずにジュルダンが慕う公爵夫人ドリメールを表した音楽。・・・とそれを聴くとどろどろした音楽を思い浮かべるけれど音楽自体はこういう優雅な感じ。
どの曲もこうやって優雅なんですよね。この作品。

●舌、出している感じはしますけれど。

それを分かって聴いてくれるとまだいいんだけれど・・・。

バロックあまり好きでない方もいるでしょうしね。

R.シュトラウス・ファンの中にはああいうシンプルな音楽をあまり好きでない方もいるでしょうし、ガンガン鳴ってなんぼ、という人だっていると思います。バロックリヒャルト・シュトラウスって両極端なものが結びついちゃったところがこの音楽の面白さなんですが。
では最後。「食卓の音楽」です。

♪同「食卓の音楽」

料理人たちが色とりどりのお皿をもって、入場してきてところを思い浮かべてください。

●とっても諧謔的ね。

いま曲調が変わったのは、料理の種類が変わったんですよ。あとよく聴いてると、対旋律が凄く細かい動きをしていたりとか、一見シンプルに、明るい動きをしているようでよーく聴くと、音がぶつかっていたり。「なんで、こんな音程が」と驚かされる部分もあったりして・・・。
R.シュトラウスがものすごく上級な遊びをしている感じ。聴く人が聴くと「ああ、やってるやってる」と分かるという。

●そういう仕掛けがちりばめられ散るのを聞き取ると、「あ、リヒャルト」っ思って頂けるんでしょうね。

ハープも入ってます。管楽器のフラッターも。

●電話が鳴ったのかと思いました。フラッターって?

☆吹きながら、巻き舌するんです。

そう。バロック音楽ではやらないでしょう。

●アンサンブル、楽しみですね。室内楽聴いているみたいです。

☆ちょっと大きな室内楽

●マエストロ広上の幸福感が溢れるんでしょうかね。

エストロこういうの、お好きですよね。

♪音楽は続きます・・・。

こういう調子はずれの音とか。

●ここのトランペットも大変!

☆ものすごく音が跳躍するんですね。

最後は、リヒャルトの本性が出たかな、という感じがします。

☆ちょっとうるさい感じも(笑)。

●でもここでリヒャルト・ファンは納得して頂けるかと。

このあと、話題はこの東京定期のほかのプログラムについて、シューベルトブラームスR.シュトラウスの中の「ウィーン」の話や、時代の変遷の話など、とりとめなく続いていきました・・・今回は、この《町人貴族》のご紹介まででひとまず。

日本フィル 第634回東京定期演奏会
指揮:広上純一
ヴァイオリン:ボリス・ベルキン
ピアノ(町人貴族):野田清隆

シューベルト交響曲第3番
ブラームス:ヴァイオリン協奏曲
R.シュトラウス:《町人貴族》組曲

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