公演担当と一緒に、東京定期を聴こう。第6弾R.シュトラウス《町人貴族》の巻 その3
10月東京定期について、一緒に聴きながら語り合います。
その3.にこにこ顔で棒を振られるマエストロ広上が、目に浮かぶような・・・
ではその次は「剣術の先生」。ちょっとアクティブです。
♪同「剣術の先生」
●トランペットすごい!
☆金管1本ずつなんですよね。チューバなしで。
そう。
♪曲調が変わります。
●やはり劇音楽っぽいですよね。シーンの移り変わりがよくわかる。
♪曲終わる。
と、まあ。ちょっとここは「プルチネッラ」ぽいかもしれないですね。
ではその次。主人公のジュルダンがいいカッコをしようとして、仕立て屋に服を頼むところ。タイトルもそのまま「仕立て屋の入場と踊り」。
そうだその前に。この曲、ピアノがすごく重要。ピアノ協奏曲のようになっていて、今回も野田清隆さんという方がマエストロのご指名の名手が登場します。
●ピアノの位置も、協奏曲みたいに前になるの?
いや、今回はオケのド真ん中に配置します。ちょっと変わった並びになるので当日までお楽しみに。
☆それぐらい重要なんですね。
●それにしてもこの曲は、あまり演奏されないですよね。
いや、年1回はどこかでされているのではないですか?あんまり回数は多くないけど。
♪音楽は続く・・・
●かわいい・・・牧歌的な。
うん。ここは酔っぱらいの音楽ですね。
●コンサートマスターのソロですね。
コンミス江口さんのソロになります。
♪ヴァイオリン・ソロが大活躍。
●ニコニコ顔で棒を振られるマエストロ広上が目に浮かびますね・・・
でしょう・・・(笑)。
♪真剣に譜面に没頭する企画担当者
●・・・いちおう、企画担当者と「一緒に」つっこみながら東京定期の曲を聴こうって企画なんですけれど。黙って聴いておわっちゃうと、なにもテープに入らなくて、原稿にならないんです。
この曲の場合、編成は薄いんだけど、各楽器がとにかく活躍するので、どの楽器がどれだけ難しいことを担当しているんだろう、ということを楽譜を見てるとよく分かる。
●そういうことを、もっと言って下さいよ。
いま、言いました!
☆でも、すごく難しいことを、この録音のひとたちはさらっと弾いてますねぇ。
れはシカゴ響のCDですね。
●「薄い」ってどういうこと?
音符の重なりが薄い、ということ。でもその分、ソロの部分がとても沢山あって金管もハード。バロックや古典派へ先祖帰りしているように見えて、決して楽なことはしていない。ただ戻っているわけではない。オケが上手くないと、こんな曲はできません!(自信。)先月のマーラー3番の時に絶賛された奏者たちと、コンサートミストレスの江口さん、アシスタントコンサートマスターは鎌田泉さん、万全です。
その次は、「リュリのメヌエット」。元ネタは言うまでもなくリュリの書いた音楽。
♪同「リュリのメヌエット」
このモチーフが何度も繰り返されます。
●なんだか本当に古楽のような・・・弦もヴィブラートをかけずに。
スタッフその4、飛び入りです○この録音だとガット弦みたいな音を出してますね。
そうですね、リコーダーで吹いたら絵になるだろうな、という感じ。原作では、ジュルダンが貴族の家に行ったところです。
●やっぱり、ストーリーを知っていたほうが面白い気がします。
とまあこういう感じ。ガンガン音が鳴るわけではない。《町人貴族》の音楽が持つこの「大人な」音楽の良さを是非味わって欲しいですね。《英雄の生涯》のような金管がガーンっと鳴るリヒャルトを思い浮かべていらっしゃると、肩すかしを食らう、かもしれない。ただもともとは彼はウィーンの作曲家ですし、なんでもかんでも大音量ではなくて、基本的に音楽は優雅なんです。体育会系ではなくて。
●・・・どういう人だったんですか?リヒャルト・シュトラウスは。
変人ではあったんですよ。《英雄の生涯》などは完全に自己の投影ですから。自分は凄いんだぞ、天才なんだぞ!とアピールするような作品も。超ナルシストだった。
●結婚できたんですか?
結婚もしたし80歳過ぎまで長生きもした。ただ晩年はナチスに協力したということで、あんまり幸せではなかったようです。活動が制限されたりとか。
フルトンヴェングラーやカラヤンだってそういう時期がありましたよね。