一緒に東京定期を聴こう 第8弾ラン・シュイとドイツロマン派の巻 その2 シューマン

シューベルト ピアノ五重奏曲《鱒》
シューマン ピアノ五重奏曲
吉松隆 ピアノ協奏曲《メモ・フローラ》

どれ聴いてもきれいなピアノの音ですね。

●全て田部京子さんのピアノ演奏です。お聴きの通り非常に美しいこの音色は彼女の最大の魅力ですよね。今回のシューマンのピアノ協奏曲は、田部さんからのご提案でもありました。

●さて次にピアノ協奏曲について。第1主題の話は有名なんですが、ご存じ?
最初にオーボエが演奏する「ドーシーララ♪」という下降音型が奥さんのクララの名前を表しているという話。つまりドイツ語とイタリア語読みに置きかえると「C-H-La-La」、つまりクララ(Clara)となるわけ。

シューマン ピアノ協奏曲 第1楽章
 
そのあとクラリネットが出てきて一応第2主題なんですけれど、第1主題を転調してちょっと明るくしただけ、といった様相。つまり「クララの主題」が全編にわたって流れているわけです。「奥さん大好きっ!」という感じ(笑)

いつごろ書かれた曲なんですか?

1845年の作曲ですね。この協奏曲が出来るまでに、

1828年 Es dur
1829〜1831年 F dur
1839 年 d moll

と、色々書いたのですが、上記はみんな未完に終わっていました。
そして1841年に書いた fantasieを第1楽章にし、1845年にそれに加えてintermezzo(第二楽章)とfinale(第三楽章)を足して現在の形に完成させました。

ちなみにシューマンは、他にもピアノとオケのための作品を書いています(《序奏とアレグロ・アパッショナート》とか《序奏とコンサート用アレグロ》)。

純粋なピアノ協奏曲は1曲だけしか書かなかったってことですね。
なんでこの作品の前に書かれたものは未完に終わったんでしょうねぇ・・・?

●モノの本によるとシューマン自身のオーケストレーションが未熟だったとも言われていますが、それが本当かどうか分からないですよ。
シューマンは他にもヴァイオリンやチェロのための協奏曲を書いています。あと変わりダネとしては4つのホルンのための「コンツェルト・シュトゥック」という作品がありますタイトル通り4つのホルンが出て来るんです。4、5年前に下野さん指揮で日本フィルでもやりましたよ。非常に威勢のよい、ある意味躁状態シューマン。4つのホルンのための協奏曲というのも珍しいでしょう。
・・・話をピアノ・コンチェルトに戻しましょう。次に第2楽章も聴きます。これは「intermezzo=間奏曲」と譜面に書かれているとおり、5分ぐらいで終わる可愛らしい曲です。

♪ シューマン ピアノ協奏曲 第2楽章

●このF-dur(ヘ長調)って、とても落ち着いた、柔らかい響きですよね。

♪ (ピアノでF-dur音階を弾く。)

●単純に、音階を追っているだけなのに。ラシドレって。ここは《子どもの情景》みたいでしょう?

シューマンって、アベック《ABECC変奏曲》もそうですけれど、音遊びするようなところありますよね。

●第1楽章ではあれだけ大人のロマンを謳歌していたのに、第2楽章では急にメルヘンな世界に行っちゃったり・・・。この中間部のチェロもきれいですよね。

音色を、味わって下さい、という感じ

●ですね。

シューマンが、何歳のときの作品?

●書いた歳?生誕が1810年だから、35歳のときの作品ですね。

♪第2楽章 終わりの部分

●ここで、第1楽章のあたまの主題が出てきます。ドシララ。やっぱり、1曲の協奏曲ですよね。循環主題が貫いてる。それでここから一気に・・・

♪ シューマン ピアノ協奏曲 第3楽章
(しばらく没頭して聴いてしまう。どっしりしつつ疾走感があります。)

●はい、第1主題が出てきました。

シューマンって、どんな人だったんでしょうね。

●子どものころはさほど天才少年ではなかったようですね。とは言っても10歳ぐらいから才能発揮。でもピアノを練習しすぎて、指をだめにしてしまったんですよね。彼がそのまま成功したピアニストになっていたら、どうなってたかな。でも彼は文章を書くこともしたし、音楽出版社で編集していたこともあるし、曲も書いていたし、評論もしたんです。

知的な人だったんですね。完璧主義者だったのかな。

♪ 

●この第3楽章の第2主題が、「ヘミオラ」。3拍子なんだけど、2拍子に聴こえる、という有名な部分で演奏者泣かせの個所としてオケマンの中では有名です。

●で、シューマンブラームスという才能を見つけ出しました。これもシューマンの大きな功績、と言ってよいでしょう。そしてブラームスドヴォルザークという才能を後に見つけ出しました。そういう意味ではヨーロッパの音楽史はちゃんと繋がっていて、それぞれの伝統が受け継がれている訳ですよ。
シューマンブラームスの構成感に憧れた。ブラームスドヴォルザークの旋律の美しさ、豊富さに嫉妬した・・・。

・・・さて、ブラームスに続きます。