1月東京定期 ラザレフが刻むロシアの魂Season1 ラフマニノフ4 交響曲第3番の巻
●では話題を後半の交響曲第3番へ。
シンフォニーの3番というのは、ラフマニノフがアメリカに渡ってから書いた曲です。
そのあとにも《交響的舞曲》という大作を書きますが、一応「交響曲」と名のつくものはこれが最後。
アメリカ亡命後は演奏家として忙しかった彼は、交響曲第2番の初演からなんと26年も経ってから第3番を書き上げました(1936年)。
ちなみにこの曲の初演については、当時フィラデルフィア管弦楽団を指揮していた二人の指揮者―――ストコフスキーとオーマンディーとの間ですったもんだがあったそうです
最終的には年長のストコフスキーが振ることになったわけですが。
メロディは圧倒的に第2シンフォニーの方がロマンティックなのですが、オーケストラの鳴らし方としては3番のほうが面白いかな。
ロシアっぽいといえば、ロシア?ただね・・・・
♪ 突然大音量になります。
かっこいいんです。これは一発でラフマニノフと分かる部分です。
シンバルがジャンジャン鳴ってて。
●でも少し複雑な和声がして面白い。
2番はやっぱりある意味、単純なのかな。3番のほうが、人生苦労した感じがするというか・・・1917にまずパリに亡命して、その翌年にはアメリカへ、という艱難辛苦を超えてきた人ならではの複雑な味わいが増したように思うのです。
♪同
そんなに息の長いメロディも出てこない。2番は連綿と続くメロディがあるけど。
●フランスものみたいに情景がくるくる変わりますね。
♪同
あ、ここのメロディはちゃんと聴いて下さい。これがどんどん展開していきます。
●劇音楽みたいですね。
でしょう。
この曲1936年に書かれているということは、このころもうブーレーズも生まれています。で、一去年の12月定期で演奏した《ルル》は1928年に書かれているから、既に当時ちょっと時代遅れに聴こえてた曲でもあるんです。
もう12音技法の曲も書かれていて、結構成熟し切っている時代ですよ。
その時代にラフマニノフはこんなロマンティックな音楽を書いていた。
アメリカという特殊な環境のせいかもしれません。
表情も色彩豊か。
そういう意味では2番より成熟している。
さて、次の2楽章はゆったりとスケルツォ的な部分が混ざっています。
ハープが入っているんですよ。1楽章の始まり方と、ちょっと似ている。
●弦楽器にしかできないこと(ながーいフレーズ)をしていますね。
ちょっと和の要素もあるでしょう。日本の影響なんか受けてはいないんですけれど。
不思議な和風な感じがします。
●2番を聴いているより、安心感がない気がします・・・予測不能。
一応複合3部形式となってはいますが。「変則的な複合3部形式」って、ほとんど形式なしってことですよね(笑)。
ソロがたくさんあって、オーケストラは大変だと思います。
表情がころころ変わって、地味なんですけれどなかなか面白い。
序奏が終わると、急に楽しい感じになります。
さあ、宴会の始まりです。
ここになると小太鼓も聴こえて、ああ、ラフマニノフだ!という気がします。
♪同
頭の主題が戻って来るところなんですけれど、持って行き方がとてもユニークです。
そして怒濤のフィナーレへ。
♪ハープと木管楽器がつむじ風のように昇って降りて、ダガダンダンダン!×2のあと終わります。
という終わり方。3番は終わり方一つとってもちょっと複雑ですよね。
●またマエストロ・ラザレフはお客様の方に振り返るんでしょうねえ(笑)どうだ!面白いだろ!と言わんばかりに。