2013/06/03 山田和樹の西方見聞録<5月23・24日 ヨーテボリ交響楽団>

ヨーテボリスウェーデン第2の都市で、北海側の港町だ。
小ぢんまりした作りの街だが、ショッピング街も充実していて賑やかな印象。
ヨーテボリ交響楽団と言えば、ネーメ・ヤルヴィがシェフ(首席指揮者)を務めていた時代が印象的だ。僕もこのコンビの多くのCDを持っている。
今は、グスターヴォ・デュダメルがシェフで、来シーズンからはケント・ナガノが就任する。

ニールセン/序曲「ヘリオス
ベント・セアンセン/Exit Music
ラヴェルバレエ音楽「ダフニスとクロエ」全曲(ヨーテボリ交響楽団合唱団)

練習初日。
取っつきにくい印象はほんの最初だけ。すぐにスマイルが飛び交い、家庭的な温かいオーケストラだと実感する。
合唱がプログラムに入っている時の練習スケジュールは、少しハードになる。オーケストラの練習を終えた後に、合唱だけの練習。オーケストラはもちろん正真正銘のプロだが、合唱団はアマチュア。日中はそれぞれの仕事をしているので、集まれるのは夜に限られる。
「ダフニスとクロエ」には難しいアカペラ(無伴奏)の部分があり、ここの雰囲気をどう作るかで演奏の善し悪しが左右されてしまう。合唱団と共にじっくりと練習。
帰路、空を見上げると、そこには見たこともないような色の夕焼けが広がっていた。しばし呆然と立ち尽くした。
これは北欧ならではの風景なのだろう。旅をして様々な風景を見ることの大切さを改めて実感。普段は滅多に写真など撮らないのだが、あまりの美しさに写メで試みるも、やはり全然色が違って映ってしまうので残念。記憶に焼き付けることにする。
順調に2日目と3日目の練習を終えて、いざ本番。
ニールセンの序曲「ヘリオス」は、エーゲ海の日の出を表現した曲。日の出前の静謐な雰囲気から、鳥肌が立つ感覚があった。
実は、ニールセン自身も1920年代にはこのエーテボリ交響楽団のシェフだったそうで、時代を超えた結びつきというか、タイムスリップ感を感じながらの演奏。
ベント・セアンセンは初めて知り合った作曲家なのだが、独創的な美しい音楽を作る人だった。器楽だけでなく、人の声も用いた作品で、現代音楽による「癒し」の可能性を大いに感じた。
「ダフニスとクロエ」も熱演。合唱団も大健闘。
初日の本番を終え、スタッフらと食事に行く。
僕以外は、スウェーデン人・デンマーク人・ノルウェー人だったのだが、不思議なことに彼らはそれぞれの国の言葉で話しているのに、通じ合っているのだ。
僕が目を丸くして質問すると、「だいたい似ているから通じる。通じない時は英語を使う」ということだった。実に面白い光景だった。
二日目の本番を終えると、バック・ステージで寿司パーティーが行われた。
長年このオーケストラでハープを演奏してきた松尾さんの主導によるもの。
まさしく本物の寿司(ヨーロッパの寿司はどこか違うことが多い)で、疲れも吹っ飛ぶ。
オーケストラメンバーと合唱団員が、家族みたいに仲良かったのも印象的。プロとアマチュアの垣根が無いのだ。
素晴らしい出会いに幸せいっぱい。
また再来年に再会できる予定。