山田和樹の西方見聞録 2014年10月9〜11日 リヨン国立管弦楽団

10月5日に「せんだいクラシック」にて仙台フィルとの共演を終えて、最終新幹線で上野に着いた時にはすでに台風の大雨だった。
翌6日朝の飛行機は8時間遅れとなり、乗り換えのフランクフルトで一泊せざるを得ず、7日の午前中の初練習をすることが出来なくなってしまった。オーケストラの機転で、分奏に振替えてもらい、僕は午後からの参加に。初日は曲を通すだけで精一杯のリハーサルになってしまった。

このオーケストラは1969年に創設された比較的新しいオーケストラで、現在の音楽監督はレナード・スラットキン氏。同じくリヨンのオペラのオーケストラ、リヨン歌劇場管弦楽団大野和士さんが音楽監督をされている。
面白いのは、この一つの街の二つのオーケストラが”同時”に、今年7月に来日公演を行っていたことだ。これは珍しい。加えて、リヨンからそう遠くないジュネーヴの我がスイス・ロマンド管弦楽団もまったく同じ時期に日本公演をしていたのだ。

リヨンとジュネーヴは距離は近いのだが、国境を挟むせいか、オーケストラの個性はまったく異なっているのが面白い。僕の感覚でいうと、音の密度がリヨンのオケのほうが濃いように思う。

10月9・11日
ブルーノ・マントヴァーニ/タイム・ストレッチ
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲(独奏:イザベル・ファウスト
ルーセル/「バッカスとアリアーヌ」第1・2組曲
10月10日
サン=サーンス/歌劇「サムソンとデリラ」よりバッカナール
ドリーブ/「シルヴィア」組曲
ルーセル/「バッカスとアリアーヌ」第2組曲

曲目が多いことと、リハーサルが短くなってしまったことで、オーケストラを疲れさせてしまったのではないかとも思ったが、本番では端正でありながら、実に熱のこもった演奏に結びついて嬉しかった。
願わくばホールがもっと良ければ、と思ってしまうのだが、だいたいフランスには良いホールが無い(笑)
日本からの目線で、クラシックの本場ではさぞ立派なホールがひしめき合って、という想像はここフランスでは打ち砕かれることになる。
しかし、そのような環境の中で、フランスのオーケストラ特有の色彩感ある煌びやかなサウンドが培われてきたのもまた事実であり、オーケストラとホールの関係は常に面白い。