山田和樹の西方見聞録 2014年10月17・18・20日 ザールブリュッケン・カイザースラウテルン・ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団

実に長い名前のオーケストラ。二つの街のオーケストラが合併して、現在の名称になった。団員もそれぞれの街に半分ずつ住んでいるので、今週はザールブリュッケンで練習、来週はカイザースラウテルンで練習といったローテーションになっているらしい。
日本にもたびたび来日していて、指揮者スクロヴァチェフスキさんとのコンビで有名だが、意外なことにスクロヴァチェフスキさんはこのオーケストラの音楽監督に就任したことはなく、長い間「首席客演指揮者」として大きな存在感を示している。これも素敵な関係だなと思った。

僕がこのオーケストラを指揮するのは2年半ぶり。前回も素晴らしいオーケストラだな、と思ったのだが、今回もまた素敵な時間を過ごすことが出来た。

藤倉大/Rare Gravity(ドイツ初演)
チャイコフスキーロココの主題による変奏曲(ヴィオラ版、独奏:マキシム・リザノフ)
リムスキー=コルサコフ/交響組曲「シェヘラザード」

スイス・ロマンド管の日本公演にて世界初演した藤倉氏の作品だが、ドイツのオケの手にかかるとまた違ったサウンドが現れた。特に現代音楽だとオーケストラの譜面の読み方で、サウンドが全く異なってくるから面白い。
ロココの主題による変奏曲」は、通常のチェロ独奏ではなく、ヴィオラ独奏で。
マキシム・リザノフが素晴らしいソロを聴かせてくれた。彼は指揮者としても活躍している多才なアーティストだ。
「シェヘラザード」はオーケストラの総力をあげて、圧巻の音絵巻になったと思う。特にコンサートマスターが奏でるシェヘラザード王妃のテーマが美しかった。

このオーケストラは、現実主義的なドイツの中にあって、テレパシーが通い合う稀有なオーケストラだと思う。割としかめっ面の人も多いのがドイツのオケの常なのだが、フランスとの国境が近いせいか、皆ニコニコしていて雰囲気も温かい。またすぐに共演したくなるオーケストラの一つだ。