公演担当と一緒に、オーケストラを聴こう 第2弾その5マーラーの巻

その5。タリラリランっ♪の裏にある不安、そしてパロディ。

・・・で、このままずっと第1主題が。もう少し我慢して。非常にさわやかなメロディ。

■牧歌的というか。なんだか、舞台作品みたいね。オペラの1シーンみたい。

タリラリランっ♪タリラリランっ♪(と、とても嬉しそうに歌う。ほんとうにタリラリラン♪と聴こえますから、聴いてみて下さい)と、これが第2主題。
ここまでが提示部なんだけど、ここで繰り返し記号があって、繰り返しなさいよって書かれてる。だから本当に純粋なソナタ形式です。序章つきの、ソナタ形式

で、マーラーって人は、心臓病を患ったこともあって晩年に近づくにつれてどんどん「死」のことばかり考えるようになる。この曲も3楽章はすごく暗いんだけど、それでもまだ第1楽章や第2楽章は素直に明るいんだと思う。結局、書いたのが29歳の頃だからまだ若いんですよね。

でもかなりなペシミストであったことは確か。幸せの絶頂期だった交響曲第5番を書いた頃に、次女が生まれてるんだけど、同じ時に《亡き子を偲ぶ歌》って曲を書いたりしている。その4年後に長女がほんとに死んじゃうんですよ。
まだ子どもが生まれて幸せなときに、《亡き子を偲ぶ歌》とか書いたり、シンフォニー6番《悲劇的》とか書いたりするので、多分運命的に「オレ、不幸のどん底に落ちる」ということをずーっと感じ続けていた、ひと。

●▲■○うーーーーん。

地位としてはすごく高くてウィーンの国立歌劇場の指揮者をやったりとか、ニューヨーク・フィル振ったりとか、すごいキャリアを築き上げたんだけど、常に後ろには「死」が落とし穴として待っているということを常に考え続けちゃった人だから。どんどん曲が暗くなっていくんだけども。

(・・・とボリュームをあげる。2度目のタリラリランっ♪が終わるところ)

で、ここからが展開部になります。フルート。・・・という感じで展開部が進みます。

さっき「パロディ」って言ったのはなんでかというと、さっきの第1主題が自作のセルフカバーなんです、言ってみれば。
マーラーの歌曲集で《さすらう若人たちの歌》という曲があるんですが、その第2曲のメロディがそのままシンフォニーの主題として使われているのね。

(CDをかける。)

この曲、この前N響アワーでやってましたねー

第3楽章にもこの歌曲からパクリが見られるんだけど。
で、ちょっと話はずれるんだけどそのパロディのほうに着目してやると、もう一つですね(・・・と、CD棚のほうへ。探し始める)

■・・・CDの位置覚えてんの?

大体覚えてんだけど。うーんマーラーの2番が欲しいんだけどな。

■アケさんCDにあるんじゃない?左、ビデオの上。

ありがとう。
2番のね、3楽章なんですよ。
分かりやすいパロディの例。ちょっと頭のとこ聴いて下さい(と、かける)。

ティンパニの音。ではじまる、3拍子のメリーゴーランドのような曲。)

でこれが第2番の第3楽章。よく覚えていて下さい。でマーラー自身がどうパクったか。ていうか。これが元ネタだね、こっちのほうが。これが《子どもの不思議な角笛》という歌曲集の中の、「魚に説教するパドヴァの聖アントニウス」って曲なんだけども。
・・・まったく一緒でしょ。
で、話のついでだから、今のマーラーを別の作曲家がパクったという例があります。
ルチアーノ・ベリオっていう現代音楽の作曲家が書いた《シンフォニア》という曲の第3楽章。ええと、まず、聴いてもらったほうが面白いな。

大音響とカオス

ベースに流れているのは、マーラーの2番の第3楽章。

●・・・言葉が色々あって気持ち悪いです。

日本フィルでもやったことある。井上道義さんでやって、何がすごいって、これを全部日本語訳でやったの。

●へえ。言語いっぱい入ってますよね。これ全部訳したんですか?(彼女はプログラム作成担当につき、その作業の厄介さに眉をひそめる)

そうです。
他にも色々主に20世紀に作られた既成曲が引用されてるんですが・・・。まあそれだけマーラーっていう人が20世紀を象徴する作曲家だ、ということですかね。ちなみに今のベリオの曲は1967年に初演された20世紀の名曲の一つです。

●大変そう。どうやって歌詞書くんだろう・・・(彼女はプログラム作成担当者につき・・・以下同文)

で、マーラーの話に戻ると、さっきの4度のメロディが、ずっと支配的。なんですけど。

■意外とキャッチーですね。メロディが。

ノックノック。マスミツさん電話でーす。
(ダダダダダっと足音が近づいてきて、マスミツ戻る)

▲走って帰ってきた

走って帰ってきました。第2主題が出て、おわります。

▲ダンス入れると魅力的かも。

いいかもしれない。確かにね。

■ちょっと祝祭的でね。