公演担当と一緒に、オーケストラを聴こう。第2弾マーラーの巻 その7
その7。BruderJakob, BruderJakob
Schläfst du noch? Schläfst du noch?
・・・で第3楽章。これも冒頭にティンパニが4度の音を弾いて、コントラバスのソロっていうすごい珍しい曲。元ネタの既成曲があってそれを短調にしちゃってるんだけど、もとの曲は、
■フレール・ジャック?
そう。(嬉しそうに長調のほうを歌う)
●あ、それ、ピアノの練習曲でありました。
これフランスの昔からある民謡なんだけど、ここでひねくれ者のマーラーが登場。あえて短調にしちゃう。しかもコントラバスの悲しげな音というか。
▲今回は、高山さん?
(注:ポッドキャストはコントラバスの高山さんと、ヴィオラの小池さんです)
高山さん。この次に奏でるのはファゴット。
■ほんとに輪唱するんだー
▲かえるの歌だ・・・
次にオーボエの少しおちゃらけた旋律が入るんだけど、やっぱり悲しい・・・
コントラバス、ファゴット、オーボエ、って悲しい音がするでしょう。
●このときのマーラーさんの心境を疑います。
■結構楽しんでたんじゃない?イヒヒ、と思いながら作ってたり。案外。
初稿版ではこの楽章のことを「座礁、カロ風の葬送行進曲」って書いている。
■あら、突然楽しくなった。なんかアラビア風。チャールダーシュみたい。これでどんどん早くなっていったら。
マーラーの頭の中には、昔から軍楽隊のメロディーがあったんですよね。幼少期の遠い記憶・・・。彼のシンフォニーにはしょっちゅう出てきます。ブンチャンブンチャンっていう。
ここであたまのメロディ出てきます。
で、こっからがBの部分にはいるんですけれど、
●これも3部形式?
3部形式。こっからBの部分。
ものの本によると、「夢の中で苦悩からの解放」って。要は、一瞬、現実逃避してる感じ。考えようによっては、あまりに悲しい状況で少し「あちら」の世界に行っちゃってる状態かもしれない。
●書いたの29歳ですよね。
そう。君とおなじ年ぐらい?
●そうですね。1歳年上かな。
でもちょっと短調になったり。悲しい感じは消えない。
■友達になったら大変そうだね。
マーラーの顔は見たことある?
■それはある。ブルックナーのときはなかったけれど。かっこいいよね?
まあねえ・・・でも神経質そうだよね。
●そんな感じがする。
で、夢も終わって、またもとに戻ってきちゃう。
■暗い。
暗いでしょう。でまた葬式に戻ってきちゃう。
▲躁鬱だ。
■子どもの歌をちょっと変えて葬送行進曲に使うっていうのは、なんかあるのかな。
あるんでしょうね。マーラーさんに訊いてみないと分かんないけれど。あえて明るい曲をこうして暗くして。で暗いといっても、後のシンフォニーみたいに大声で「ああ!暗いんだオレは!悲しんでるんだー苦しんでるんだー!」とこわだかに言うんじゃなくて、淡々とずっと、この調子。だから逆に怖い。
●作曲するときって、そのときの精神状態関わるんでしょうね。
関わるでしょうね。で、一瞬夢に戻ります。でも、悲しくなります。
(で、なんだかテーマが入り乱れて)
笑、もう、やけくそって感じですね。でも、行き着くところは結局・・・ここ。
●(物悲しいテーマを聴きながら)じゃあ、インキネンと同年代ぐらいってことか。マーラー。
■なんだかナイトメア・ビフォア・クリスマスみたいだよね。
さっき躁鬱って言葉がでたけど、象徴的なところが今から出てきます・・・
(一瞬の静寂のあと・・・)