第5弾 マーラー「交響曲第3番」の巻 その2
さて、2楽章はさらりと行きましょう
今年の4月定期で山田和樹さんに振って頂いたとき「花の章」っていう、もともと交響曲第1番(正確には交響詩)の第2楽章になるはずだった曲をやったんですけれど、それとちょっと似た雰囲気の曲です。マーラーがそうてい当初設定したタイトル(「野原の花々が私に語ること」)を見ても分かりますけれど・・・、
・牧歌的な。
牧歌的な。まあ第1楽章であれだけ荒れ狂ったので、クールダウンの意味もあるのかな。4分の3拍子でイ長調。明るい。第1楽章がニ短調って、ちょっと悪魔的な暗〜い雰囲気を出すのに対し、これはイ長調、明るくて、ここはロマンティック。
・でもなんだか素直じゃないですよね。どこかで病んでるというか。これが素直だったら面白くないのかもしれないけど。
もうちょっと聴くともっと素直じゃないマーラーが出てきます。・・・ほら雲行きが怪しくなってきたでしょう。8分の3拍子。さっきは4分の3拍子だったけれど。それで、4分の2拍子になります。8分の9拍子。・・・元に戻ります。とまぁこんな感じ。時間がないので飛ばします。
2楽章、本当にさらりと。
さて第3楽章・・・
・あ、聴いたことあるメロディが。
歌をやってる人は分かるかもね。マーラーの歌曲《子どもの不思議な角笛》からの引用です。これはスケルツォ。さっきはメヌエット。だから一応、順当に交響曲の形はとっているんだよね。
・それにしてもやっぱり、歌心のある人ですよね。そう、やっぱり歌のひとですよ。口ずさめるというか。
うん。10番シンフォニーとかだと、もはや口ずさむ余裕は無くなりますが・・・(笑)。9個の音が一気にガーッと鳴ったり・・・まるで地獄絵図。
3番はまだそう意味で平和。でもこのドロっとした感じ(文字では表せないのだけれど)が、マーラーっぽい。必ずしも安定しない感じが。
・ぜひCDではなく、オーケストラの配置を見ながら聴いて頂きたい曲ですねあ、あそこで鳴った。あそこで鳴った、とステレオを感じて頂いて。
まさにそう!マーラーはある意味現代的な耳を持っていたひとで、2Dじゃなくて3Dの耳を持っていたというか、そういった音響空間を非常に強く意識した人。
・教会で演奏しているとそういう感じになる(聖歌隊が左右に別れていたりするから)のかなと思いますけれど、
ああなるほどね。
で、この楽章でもマーラーの不安定っぷりがそこかしこに。こういう、きれいなところにいきなりジャジャジャジャジャジャっと、乱暴な音が入ったりとかね(ニヤニヤ・・・)。
・いつも非常にきれいなものに心を泳がせているんだけれど、いつも不安、という感じ。
何かあるとすぐ動揺しちゃったりとか。楽しげな場面でもすぐに短調になっちゃったりとか、トランペットが警告信号を鳴らしたりとか。
で、ここからがポストホルンの登場。遠くの方からなっている感じで・・・。
・どういうカタチしているの?ポストホルンて。
それはこちらを参照のこと。
今回は我らがオットー(オッタヴィアーノ・クリストーフォリ)が吹きます。
・音色的には、柔らかい、ということなんですか。
柔らかい。ちなみにモーツァルトも有名な《ポストホルン・セレナーデ》という作品を書いています。これも全楽章に出て来る訳ではないのだけど。
・・・(音楽を聴きながら)ここが難しいんだ、どソロで静かで柔らかで、しかも高い音って・・・。
マーラーはこういう弱音の金管楽器の使い方もうまいですよね。1楽章みたいなカーンッとした肉食系の使い方と、こういうフワフワとした草食系の響き。
・世紀末なんだね。なんだか。
ちょっと先に急ぎます。
・これ、同じ3楽章?
3楽章のコーダの部分。ここら辺、もうブルックナーみたいになっちゃってる。