10月13日 トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

トゥールーズという地名はよく耳にしていたのだが、実際に訪れるのは初めて。
フランスの南に位置し、ピレネー山脈を越えればそこはスペインだ。
トゥールーズに着いてすぐに、この街が好きになった。何かノスタルジーを感じさせる街なのだ。レンガ造りの建物が並ぶ旧市街が夕日に輝く様子から「バラ色の町」と呼ばれているのも頷けるほど、実際にとても美しい街並で、至る所に大きな教会がそびえている。教会が多いということは、オルガンが多い。そう、トゥールーズは「オルガンの町」でもあり、オルガンの音楽祭や国際コンクールの中心地となっているそうだ。
恥ずかしながら、この予備知識が僕にはなく、、現地入りしてからようやくプログラムの意図を理解することになった。
DARASSE/Instants Passes
プーランク/オルガン協奏曲(Michel Bouvardさん)
ベルリオーズ幻想交響曲
このDARASSEという作曲家の作品は現代音楽でとても難しく、何でこの作品を初対面の指揮者に託すのだろうか、と思っていたのだが、実はこのDARASSEさん、トゥールーズに生まれてトゥールーズで亡くなった、オルガンの歴史を語る上で欠かすことのできない高名なオルガン奏者だったのだ。
それに加えて、プーランクのオルガン協奏曲。ベルリオーズはともかくとして、オルガンに焦点を定めたこのプログラムは、「トゥールーズ国際オルガン音楽祭」とトゥールーズ・キャピトール管の定期演奏会をリンクさせたものだったのだ。
プログラムの意図については合点のいったものの、最大の難題はオルガン協奏曲の共演方法であった。
オーケストラはもちろん普通にコンサートホールで演奏するのだが、オルガンは何と300メートルほど離れた教会で演奏して、相互同時中継するという。そんなことが出来るのだろうか、時差が発生するはずなのだが、、。
疑心暗鬼で臨んだリハーサル。ところが、現代の技術は驚くべきもので、全くタイムラグのない状態で合わせることができたのだ!
同じ空間で息遣いを共有できないことの難点はあるにはあったが、スクリーンを通して、音を通しての独特のコミュニケーションに、時空を超えたようなタイムスリップ感を味わえたのはとても面白かった。
(その時の模様 http://www.youtube.com/watch?v=YBqZNtTSDEc

トゥルーズ・キャピトール管はフランスを代表するオーケストラの一つ。僕の大好きなミシェル・プラッソンさんが35年間音楽監督をされていて、膨大なレコーディングが存在している。現在は、トゥガン・ソヒエフ音楽監督が引き継がれ、フランスとロシアのサウンドが相まったような独特な魅力を持つオーケストラだ。
いわゆるお国もの、フランスのオーケストラと「幻想交響曲」を演奏するとなると相当な緊張があるものだが、ここのオーケストラは僕の音楽のイメージや意図をよく理解・吸収してくれて、とてもエキサイティングな演奏をすることができた。あるメンバーが『僕たちは「幻想」を何百回とやってきたが、今日はいつもの「幻想」ではなく、「YAMADAの幻想」を演奏する!』と言ってくれたことは心底嬉しかった。
早ければ、来シーズンにまた再共演できそうで、とても嬉しい。

追記
オルガンは本当に奥が深い。
オルガン音楽祭の期間中、僕も一つだけ演奏会に行くことが出来たのだが、演目は何とストラヴィンスキー春の祭典」のオルガン連弾バージョン。目
にも留まらぬ早さの指と足とアシスタントの動き。それはそれは凄まじかった。
オルガンは本プレーヤーだけでなく、アシスタントの機敏さで演奏が大きく左右されてしまう。
「一番優秀なアシスタントは日本人だ」と聞いて、何だか誇らしかった。